新リース会計基準の適用が迫り、「いつから始まるのか?」「実務で何をすればいいのか?」とお悩みの経理・財務担当者の方も多いのではないでしょうか。本記事を読めば、新基準の概要から適用時期、旧基準との違い、実務でやるべき対応フローまで、知りたいことがすべてわかります。新基準の最大のポイントは、これまでオフバランス処理が可能だったリース契約も含め、借手は原則すべてのリースを資産・負債として貸借対照表に計上(オンバランス化)する点です。図解を交えながら、この変更が自己資本比率やROAといった経営指標に与える影響や、今から準備すべき具体的なステップをわかりやすく解説します。
新リース会計基準とは 導入の背景と目的を解説
2026年度から本格的に適用が開始される「新リース会計基準」。これは、国際的な会計基準であるIFRS第16号「リース」や米国会計基準(ASC 842)との整合性を図るため、企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した「リースに関する会計基準(案)」を指します。この改正は、特にこれまで「オペレーティング・リース」を利用してきた企業の財務諸表に大きな影響を与えるため、経理・財務担当者は早期の理解と準備が不可欠です。
本章では、すべての基本となる「なぜ今、リース会計基準が改正されるのか」という背景と、新基準が目指す目的、そして対象となる企業や契約の範囲について、基礎から分かりやすく解説します。
なぜリース会計基準が改正されるのか
今回のリース会計基準改正の最大の目的は、財務諸表の透明性と国際的な比較可能性を高めることにあります。従来の会計基準には、投資家や金融機関が企業の財政状態を正確に把握する上で、大きな課題がありました。
その課題とは、いわゆる「オフバランス」の問題です。従来の日本の会計基準では、リース契約は「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2つに分類されていました。このうち、オペレーティング・リースは、賃貸借取引として扱われ、リース物件を資産として、将来のリース料支払義務を負債として貸借対照表(BS)に計上する必要がありませんでした。
しかし、航空会社が航空機を、小売業が店舗をリースするなど、多額のリース契約を事業の根幹としている企業では、貸借対照表に現れない巨額のリース債務が実質的に存在していました。これにより、投資家が企業の本当のリスクや負債の全体像を把握することが困難になり、企業間の財務状況の比較を歪める要因となっていたのです。
このような状況を改善し、投資家がより適切な意思決定を行えるようにするため、国際会計基準審議会(IASB)はIFRS第16号を公表。原則としてすべてのリースを貸借対照表に資産・負債として計上(オンバランス化)するよう求めたのです。今回の日本の新リース会計基準は、この国際的な潮流に合わせ、会計基準のコンバージェンス(収斂)を進めるために導入されます。
新リース会計基準の対象となる企業と契約
新リース会計基準は、どのような企業や契約に適用されるのでしょうか。自社が対象となるかを確認することは、対応の第一歩です。
対象となる企業は、金融商品取引法の適用を受ける上場企業とその子会社・関連会社が中心となります。現時点の公開草案では、中小企業など非上場企業への強制適用は見送られる方向ですが、今後の動向には注意が必要です。
次に、対象となる「リース契約」の定義も重要です。新基準では、「ファイナンス」や「オペレーティング」といった従来の区分は借手側ではなくなり、以下の要件を満たす契約がすべて「リース」として会計処理の対象となります。
「原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約または契約の一部」
具体的には、契約が以下の3つの要件をすべて満たすかどうかで判断します。
| 判断要件 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 1. 識別される資産の存在 | 契約の対象となる資産が物理的または契約上、明確に特定されているか。 | ・車両番号が指定されたカーリース契約 ・ビルの特定のフロア(例:3階)の賃貸借契約 |
| 2. 経済的便益の享受 | 借手が、その資産の使用から生じる経済的便益(収益やコスト削減など)のほとんどすべてを享受する権利を有しているか。 | ・リースした機械で製品を製造し、その売上をすべて自社で得る ・賃借した店舗で営業活動を行い、利益を得る |
| 3. 資産の使用を指示する権利 | 借手が、資産の使用期間中、その資産をどのように、何のために使用するかを指示する権利(コントロールする権利)を有しているか。 | ・リース車両の行き先や使用目的を自由に決められる ・賃借したオフィスのレイアウトや利用方法を決定できる |
これらの要件を満たす契約は、たとえ契約書の名目が「賃貸借契約」や「業務委託契約」であっても、実質的にリース契約と判断され、新会計基準の適用対象となります。そのため、経理部門だけでなく、契約を管理する法務部門や各事業部門との連携が不可欠です。
新リース会計基準はいつから適用?開始時期と経過措置
新しいリース会計基準の導入にあたり、経理・財務担当者が最も気になるのが「いつから適用されるのか」という点でしょう。ここでは、企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した公開草案に基づき、新リース会計基準の適用開始時期と、適用にあたっての経過措置について詳しく解説します。
原則的な強制適用は2026年度から
新リース会計基準の原則的な強制適用は、2026年4月1日以後に開始する事業年度の期首からとされています。つまり、多くの日本企業が採用している3月決算の会社の場合、2027年3月期の期首(2026年4月1日)から新基準が強制的に適用されることになります。
具体的な適用開始日を事業年度別にまとめると、以下のようになります。
| 決算月 | 強制適用が開始される事業年度 | 具体的な開始日 |
|---|---|---|
| 3月決算 | 2027年3月期 | 2026年4月1日 |
| 12月決算 | 2027年12月期 | 2027年1月1日 |
また、新基準を適用する際には、過去の契約にどう対応するかという「経過措置」が定められています。企業は、会計方針として以下のいずれかの方法を選択適用することができます。
- 原則的な取扱い(遡及適用):新基準を過去のすべての期間に遡って適用する方法。過去の財務諸表を新基準で作り直すため、期間比較可能性が確保されますが、実務的な負担は大きくなります。
- 簡便的な取扱い(修正遡及アプローチ):適用初年度の期首に、新基準を適用した場合の累積的影響額を利益剰余金に加減する方法。過去の財務諸表の修正は不要なため、実務負担が軽減されます。
どちらの方法を選択するかによって、準備作業の内容やスケジュールが大きく変わるため、自社の状況に合わせて早期に方針を決定することが重要です。
早期適用はいつから可能か
新リース会計基準は、強制適用を待たずに前倒しで適用すること(早期適用)も認められています。早期適用は、2024年4月1日以後に開始する事業年度の期首から可能です。IFRS(国際財務報告基準)を任意適用している企業との比較可能性を高めたい場合や、先行して財務の透明性を向上させたい企業などが早期適用を選択するケースが考えられます。
早期適用を選択した場合の開始時期は、以下の通りです。
| 決算月 | 早期適用が可能な最初の事業年度 | 具体的な開始日 |
|---|---|---|
| 3月決算 | 2025年3月期 | 2024年4月1日 |
| 12月決算 | 2024年12月期 | 2024年1月1日 ※ |
※2024年1月1日以後に開始する事業年度から適用可能です。
早期適用は年度の期首からだけでなく、年度の期首から3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月が経過した四半期会計期間の期首から適用することも可能です。ただし、その場合は、適用を開始する四半期会計期間を含む事業年度の期首に遡って適用する必要があります。
早期適用を行う場合でも、強制適用と同様に原則的な取扱い(遡及適用)と簡便的な取扱い(修正遡及アプローチ)のいずれかを選択することになります。準備期間が短くなるため、システム対応や業務フローの見直しを迅速に進める必要があります。
【図解】旧基準との違いは?新リース会計基準の主要な変更点
新しいリース会計基準の導入による最も大きな変更点は、「借手」における会計処理の方法が根本的に変わることです。これまで「オペレーティング・リース」として費用処理していた契約も、原則として資産・負債として貸借対照表(B/S)に計上(オンバランス化)する必要があります。これは、国際的な会計基準であるIFRS第16号や米国会計基準ASC第842号との整合性を図るための重要な改正です。一方、「貸手」の会計処理は、基本的に現行の基準が維持されます。
ここでは、借手と貸手、それぞれの立場から旧基準との違いを詳しく解説します。
借手の変更点 すべてのリースを資産計上(オンバランス化)
旧基準では、リース契約を「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2種類に分類し、会計処理を区別していました。ファイナンス・リースは資産計上(オンバランス)する一方、オペレーティング・リースは賃貸借処理として費用計上(オフバランス)するだけで済みました。
しかし、新リース会計基準では、このファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区別が原則として廃止されます。短期リースや少額リースといった一部の例外を除き、すべてのリース契約について、資産と負債を計上する「使用権モデル」が適用されることになります。
| リース分類 | 旧リース会計基準 | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| ファイナンス・リース | 資産・負債を計上(オンバランス) | 原則としてすべてのリースで資産・負債を計上(オンバランス) ※使用権モデルを適用 |
| オペレーティング・リース | 費用処理のみ(オフバランス) |
使用権資産とリース負債とは何か
新基準の適用により、借手は貸借対照表(B/S)に新たに「使用権資産」と「リース負債」という勘定科目を計上します。
- 使用権資産
リース期間にわたって原資産(リース物件)を使用する権利を資産として認識したものです。具体的には、リース負債の計上額に、前払リース料や付随費用などを加算して計算します。 - リース負債
将来支払うべきリース料総額のうち、まだ支払っていない金額を、借手の追加借入利子率などの割引率を用いて現在価値に割り引いて算出したものです。つまり、将来のリース料支払義務を負債として認識します。
この処理により、これまでB/Sに計上されていなかったオペレーティング・リース契約が可視化され、企業の財政状態をより正確に把握できるようになります。
損益計算書への影響 減価償却費と支払利息
オンバランス化は、損益計算書(P/L)上の費用の計上方法にも影響を与えます。旧基準のオペレーティング・リースでは、支払リース料を定額で費用計上していました。しかし、新基準では費用が2つの要素に分解されます。
- 減価償却費:使用権資産をリース期間にわたって規則的に費用配分します。
- 支払利息:リース負債の残高に利子率を乗じて計算します。
この結果、費用の計上パターンが変化します。支払利息はリース負債の残高が大きいリース期間の初期に多く計上され、期間の経過とともに減少していきます。そのため、減価償却費が定額であっても、費用の合計額はリース期間の前半に厚く、後半に薄くなる「費用前倒し」の特徴があります。これにより、営業利益やEBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)といった利益指標にも影響が及びます。
| 項目 | 旧リース会計基準 | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| 費用計上される勘定科目 | 支払リース料(販売費及び一般管理費など) | 減価償却費(販売費及び一般管理費など) + 支払利息(営業外費用) |
| 費用計上の特徴 | リース期間中、原則として定額 | リース期間の前半に費用が多く計上される傾向(費用前倒し) |
貸手の変更点 基本的な会計処理は維持
借手の会計処理が大きく変わる一方で、貸手側の会計処理については、現行の会計基準が基本的に維持されます。したがって、貸手は引き続きリース契約を「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類し、それぞれに応じた会計処理を行うことになります。
このため、貸手企業の実務上の負担は、借手企業に比べて限定的であると考えられます。ただし、ファイナンス・リースのうち「所有権移転外ファイナンス・リース」における収益認識に関して、売上高と売上原価を総額で計上する方法から純額で表示する方法への変更など、一部細かな改正が含まれている点には注意が必要です。貸手企業は、これらの変更点について自社のリース契約に影響があるかを確認しておく必要があります。
新リース会計基準が財務諸表に与える影響
新リース会計基準の導入による最も大きなインパクトは、これまで貸借対照表(BS)に計上されていなかったオペレーティング・リースが「オンバランス化」されることです。これにより、企業の財務状況を示す財務諸表の見え方が大きく変わります。特に、店舗や設備などでリース契約を多用する小売業、運輸業、航空業などは、その影響が顕著に現れるでしょう。ここでは、新基準が貸借対照表や主要な経営指標に具体的にどのような影響を与えるかを解説します。
貸借対照表(BS)への影響 資産と負債の増加
新リース会計基準では、借手は原則としてすべてのリース契約について、将来のリース料総額を基礎とした「リース負債」を負債の部に、リース物件を使用する権利である「使用権資産」を資産の部に計上する必要があります。これまで費用処理のみで済んでいたオペレーティング・リースもこの対象となるため、貸借対照表上の総資産と総負債が同額増加することになります。
以下の表は、オペレーティング・リース契約がある場合の、旧基準と新基準における貸借対照表のイメージの違いをまとめたものです。
| 旧リース会計基準 | 新リース会計基準 | |
|---|---|---|
| 資産の部 | 変動なし(オフバランス) | 「使用権資産」を計上し、資産が増加 |
| 負債の部 | 変動なし(オフバランス) | 「リース負債」を計上し、負債が増加 |
この変更により、これまで注記情報でしか把握できなかったリース契約の実態が貸借対照表に反映され、企業の財政状態がより透明性の高い形で開示されることになります。金融機関や投資家は、企業の本当の負債規模や資産活用状況を正確に評価しやすくなります。
自己資本比率やROAなど経営指標はどう変わるか
貸借対照表の資産と負債が増加することに伴い、財務分析に用いられる各種経営指標も変動します。これにより、企業の財務健全性や収益性の評価が変わる可能性があるため、実務担当者は注意が必要です。主な経営指標への影響は以下の通りです。
| 経営指標 | 概要 | 新基準による影響 |
|---|---|---|
| 自己資本比率 | 総資産に占める自己資本の割合。 (自己資本 ÷ 総資産) |
総資産が増加するため、自己資本比率は低下する傾向にあります。これにより、財務の安全性が従来より低く評価される可能性があります。 |
| 負債比率(有利子負債比率) | 自己資本に対する負債の割合。 (負債合計 ÷ 自己資本) |
リース負債が負債(有利子負債と同様の性質を持つ)として計上されるため、負債比率は上昇します。 |
| ROA(総資産利益率) | 総資産を利用してどれだけ利益を上げたかを示す指標。 (利益 ÷ 総資産) |
分母である総資産が増加するため、ROAは低下する傾向にあります。資産効率性の評価に影響が出ます。 |
| ROE(自己資本利益率) | 自己資本に対してどれだけ利益を上げたかを示す指標。 (当期純利益 ÷ 自己資本) |
費用構造は変わりますが、当期純利益への影響は限定的であり、自己資本も変動しないため、ROEへの直接的な影響は小さいと考えられます。 |
| EBITDA | 利払前・税引前・減価償却前利益。 | 旧基準の支払リース料(営業費用)が、新基準では減価償却費と支払利息に分かれます。支払リース料がなくなるため、EBITDAは増加します。これは企業価値評価に影響を与える重要な変化です。 |
このように、新リース会計基準は単なる会計処理の変更にとどまらず、企業の財務評価そのものに大きな影響を及ぼします。特に、金融機関との融資契約において特定の経営指標(財務制限条項など)の維持が条件となっている場合は、事前に影響をシミュレーションし、関係者と協議しておくことが極めて重要です。
実務担当者がやるべきこと 新リース会計基準への対応フロー
新リース会計基準の適用に向けて、実務担当者は計画的に準備を進める必要があります。具体的に「いつまでに、何を、どのように」進めればよいのか、3つのステップに分けて対応フローを解説します。
ステップ1 リース契約の洗い出しと管理
新基準への対応は、まず自社に存在するすべてのリース契約を正確に把握することから始まります。従来の会計処理ではオフバランスだったオペレーティング・リースも資産計上の対象となるため、これまで以上に網羅的な契約の洗い出しが不可欠です。
注意すべきは、「リース」という名称の契約書だけが対象ではない点です。賃貸借契約やサービス提供契約などの中に、実質的に資産を使用する権利と、その対価を支払う義務が含まれている「リース要素」が隠れている場合があります。新基準では、これらの契約に含まれるリース要素を識別し、会計処理の対象に含める必要があります。
具体的には、以下の方法で社内の契約を網羅的に収集・整理しましょう。
- 経理部門が管理する支払調書や固定資産台帳の確認
- 各事業部門や拠点へのヒアリングによる契約実態の調査
- 契約書管理システムや経費精算システムのデータ分析
洗い出した契約については、管理台帳を作成して情報を一元管理することが重要です。Excelやスプレッドシートで管理する場合、少なくとも以下の項目を整理しておきましょう。
| 管理項目 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 契約情報 | 契約の基本的な情報 | 契約番号、契約相手先、契約締結日、リース物件名 |
| リース期間 | 解約不能期間や延長・購入オプションの有無 | 開始日:2025/4/1、終了日:2030/3/31(5年間)、延長オプションあり |
| リース料 | 月額・年額のリース料、変動リース料の有無 | 月額100,000円(固定) |
| その他 | 簡便的取扱いの適用の可否、割引率の算定根拠など | 少額リースのため簡便的取扱いを適用 |
ステップ2 会計処理方針の決定
リース契約の全体像が把握できたら、次に会計処理の方針を決定します。新リース会計基準では、企業の実態に合わせて選択適用が認められている項目があるため、自社の方針を明確に定めておく必要があります。
主な検討事項は以下の通りです。
- 簡便的な取扱いの適用方針
後の章で詳述する「短期リース」や「少額リース」について、どの範囲まで適用するかを決定します。特に少額リースについては、金額基準(例:50万円以下など)を社内で統一的に設定する必要があります。適用方針を明確にすることで、担当者による判断のばらつきを防ぎ、会計処理の統一性を確保します。 - 割引率の算定方法
リース負債の計算に用いる割引率をどのように決定するかを定めます。原則は「貸手の計算に用いられている利率」ですが、これが不明な場合は「借手の追加借入利子率」を使用します。追加借入利子率をどのように算定するのか、具体的なルール(例:取引金融機関からの調達金利を参考にするなど)をあらかじめ決めておくことが実務上重要です。 - 経過措置の選択
適用初年度における会計処理の方法として、原則的な「遡及適用」と、簡便的な「修正遡及アプローチ」のいずれかを選択します。それぞれの特徴を理解し、自社の状況(影響額の大きさ、システム対応の可否など)を考慮して慎重に判断しましょう。経過措置の比較 適用方法 内容 メリット デメリット 原則適用(遡及適用) 過去の財務諸表を新基準で再計算し、比較情報を修正する。 期間比較可能性が確保される。 過去の契約に遡って計算する必要があり、実務負担が大きい。 簡便的な取扱い(修正遡及アプローチ) 適用初年度の期首に、累積的影響額を利益剰余金に加減算する。過去の財務諸表は修正しない。 実務負担が大幅に軽減される。 適用初年度の財務諸表と過年度の財務諸表の比較可能性が損なわれる。
ステップ3 業務プロセスとシステムの整備
会計方針が固まったら、それを実行するための体制づくり、すなわち業務プロセスの見直しとシステムの整備を進めます。新基準では、リース負債の計算や減価償却費・支払利息の按分など、従来のオペレーティング・リースにはなかった複雑な計算が毎期発生します。
これらの業務をExcelなどで手作業管理することも不可能ではありませんが、契約件数が多い企業では、以下のようなリスクが懸念されます。
- 計算ミスや入力漏れなどのヒューマンエラー
- 担当者の異動や退職による業務の属人化・ブラックボックス化
- 監査対応時の資料作成に多大な工数がかかる
こうしたリスクを回避し、効率的かつ正確に新基準へ対応するためには、リース会計に特化した専門システムの活用が極めて有効な選択肢となります。
プロシップなど専門システムの活用メリット
株式会社プロシップが提供する「ProPlus」をはじめとするリース会計システムを導入することで、担当者の負担を大幅に軽減し、内部統制の強化にも繋がります。
専門システムを活用する主なメリットは以下の通りです。
| メリット | 詳細 |
|---|---|
| 複雑な計算の自動化 | 使用権資産やリース負債の計上、減価償却費と支払利息の計算、契約変更時の再計算などを自動で実行。担当者は計算ロジックを意識することなく、正確な数値を算出できます。 |
| 契約情報の一元管理 | ステップ1で洗い出したリース契約情報をシステム上で一元管理。契約の網羅性が担保され、管理部門が全社のリース契約を正確に把握できるため、ガバナンスが強化されます。 |
| 仕訳データの自動生成と連携 | 計算結果に基づき、必要な会計仕訳データを自動で生成。会計システムへスムーズに連携できるため、決算業務の大幅な効率化とミスの削減が実現します。 |
| 監査・開示資料作成の効率化 | 新基準で求められる注記情報の作成や、監査法人から要求される資料を迅速に出力。監査対応にかかる工数を大幅に削減できます。 |
新リース会計基準への対応は、単なる会計処理の変更ではなく、契約管理や業務プロセス全体の見直しを伴うプロジェクトです。適用開始までの限られた時間の中で、計画的に準備を進めることが成功の鍵となります。
知っておきたい簡便的な取扱い 短期リースと少額リース
新リース会計基準では、原則としてすべてのリース契約を使用権資産とリース負債として貸借対照表に計上(オンバランス化)する必要があります。しかし、すべてのリース契約に対して厳密な会計処理を行うことは、実務上の大きな負担となりかねません。そこで、実務上の負担を軽減するため、特定のリース契約については資産計上を免除する簡便的な取扱いが認められています。これが「短期リース」と「少額リース」に関する規定です。これらの簡便法を選択適用することで、従来通り支払リース料を費用計上するだけで済むため、経理担当者は必ず押さえておきたいポイントです。
短期リースの適用要件
短期リースとは、その名の通りリース期間が短いリース契約を指します。この簡便的な取扱いを適用することで、使用権資産とリース負債の計上を省略し、支払リース料を費用として処理できます。
具体的な適用要件は以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| リース期間 | リース開始日時点において、リース期間が12ヶ月以内であるリース。 |
| 購入オプション | 借手がその権利行使をすることが合理的に確実である購入オプションを含まないこと。 |
| 会計処理 | 支払リース料を、リース期間にわたって定額法などの合理的な方法で費用として計上します(オフバランス処理)。 |
| 適用単位 | 原資産のクラスごと(例:PC、複合機、車両など)に選択適用します。つまり、「PCは短期リースの簡便法を適用するが、車両は原則処理を行う」といった選択が可能です。 |
注意点として、「リース期間」の判定が重要になります。契約書上の期間が12ヶ月以内であっても、更新オプションの行使が合理的に確実と見込まれる場合など、実質的なリース期間が12ヶ月を超えると判断されれば短期リースには該当しません。
少額リースの適用要件
少額リースとは、リース対象となる資産(原資産)そのものの価値が低いリース契約を指します。コピー機やPC、オフィス家具などが典型例です。短期リースと同様に、この簡便法を適用すればオンバランス化は不要となります。
具体的な適用要件は以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 金額基準 | リースされている原資産が、新品であった場合の価額が少額であること。IFRS第16号では目安として5,000米ドル以下が例示されていますが、日本の会計基準案では明確な金額基準は示されていません。各企業が設定する重要性の基準に基づいて個別に判断する必要があります。 |
| 独立性 | 原資産が他の資産から独立して使用でき、それ単体で借手が便益を享受できるものであること。 |
| 会計処理 | 支払リース料を、リース期間にわたって定額法などの合理的な方法で費用として計上します(オフバランス処理)。 |
| 適用単位 | リース契約ごとに適用を判断します。短期リースのように資産クラスごとではなく、個々の契約単位で簡便法を適用するかどうかを選択できる点が異なります。 |
少額かどうかの判定は、リース料の総額ではなく、あくまで「原資産そのものの価値」で判断する点に注意が必要です。例えば、非常に高価な機械をリースする場合、月々のリース料が少額であっても、原資産の価値が高いため少額リースには該当しません。
まとめ
本記事では、2026年度から原則適用される新リース会計基準の概要と実務対応について、図解を交えて解説しました。
この基準改正の目的は、国際的な会計基準とのコンバージェンス(統一)を図ることにあり、最大の変更点は、借手において原則すべてのリース契約を資産・負債として計上する「オンバランス化」です。
これにより、これまで費用処理のみだったオペレーティング・リースも貸借対照表に「使用権資産」と「リース負債」として計上され、企業の財政状態がより実態に即して表示されるようになります。自己資本比率やROAといった経営指標にも影響が及ぶため注意が必要です。
実務担当者は、適用開始を待つのではなく、今からリース契約の網羅的な洗い出し、会計方針の決定、業務プロセスや会計システムの整備といった準備を計画的に進めることが求められます。短期・少額リースなど簡便的な取扱いも理解し、効率的な対応を目指しましょう。
